男性ホルモンが過剰に分泌されることで生じる様々な症状に悩む女性は少なくありません。体毛の増加、重度のニキビ、月経不順、さらには多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に伴う不妊など、その影響は多岐にわたります。生活習慣の改善が第一歩ではありますが、それだけでは十分な効果が得られない場合、薬物療法が選択肢となります。今回は、男性ホルモンを減らす薬物療法の基礎知識について、その種類、作用機序、注意点などを解説します。薬物療法は、医師の診断と指導のもとで行われるべきであり、自己判断での使用は絶対に避けてください。男性ホルモンを減らす目的で用いられる主な薬剤には、以下のようなものがあります。まず、最も一般的に用いられるのが「経口避妊薬(ピル)」です。ピルは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを補充することで、脳下垂体からのホルモン分泌を抑制し、結果的に卵巣からの男性ホルモン(アンドロゲン)の生成を抑える作用があります。これにより、月経周期の安定化、体毛の減少、ニキビの改善などに効果が期待できます。特に、低用量ピルがPCOSの治療によく用いられます。次に、「抗アンドロゲン剤」があります。これは、男性ホルモンの作用を直接的にブロックしたり、その生成を抑制したりする薬剤です。スピロノラクトンは、元々は利尿剤として開発されましたが、抗アンドロゲン作用があることが分かり、体毛過多やニキビの治療に用いられることがあります。フィナステリドは、男性型脱毛症の治療薬として有名ですが、女性の男性ホルモン過多による薄毛にも効果が期待されることがあります。ただし、これらの薬剤は副作用のリスクもあり、特に妊娠中の女性には禁忌となる場合があるため、使用には厳重な注意が必要です。また、インスリン抵抗性が男性ホルモンの過剰分泌に関与しているPCOSの患者さんに対しては、「インスリン感受性改善薬」が用いられることがあります。メトホルミンは、インスリンの働きを改善し、血糖値を下げる作用がありますが、PCOS患者さんのインスリン抵抗性を改善することで、男性ホルモンのレベルを下げ、排卵を促す効果も期待されています。これにより、月経周期が安定し、妊娠しやすくなる可能性があります。薬物療法を開始する際には、医師との十分な相談が不可欠です。
男性ホルモンを減らす薬物療法の基礎知識