30代前半の頃、私はIT系のベンチャー企業で寝る間も惜しんで働いていました。当時は仕事が楽しくて仕方がなく、毎日平均して4時間ほどの睡眠で、疲労はエナジードリンクで誤魔化すような生活を2年ほど続けていました。異変に気づいたのは、ある朝の洗面所でした。排水溝に溜まる抜け毛の量が、それまでの倍以上に増えていたのです。最初は季節の変わり目だろうと自分に言い聞かせましたが、数か月後には鏡越しに見える前頭部の地肌が明らかに透けて見えるようになりました。そこで私は初めて、自分の不規則な生活が髪に牙を剥いている現実に気づきました。ネットで調べると「睡眠不足はげる」という言葉が溢れており、恐怖を感じた私は、そこから180度の生活改善を決意しました。まず徹底したのは、何があっても23時には布団に入るというルールの厳守です。仕事が終わっていなくても、パソコンを閉じて部屋の照明を落としました。寝る1時間前からはスマートフォンも見ないようにし、脳をリラックスさせる環境を作りました。食事についても、髪の材料となるタンパク質を意識して摂るようにし、睡眠の質を下げる深酒を控えました。改善を始めて最初の1か月は、まだ抜け毛が止まらず不安でしたが、3か月を過ぎた頃から驚くべき変化が現れました。まず、髪の1本1本にコシが戻り、朝起きた時の髪の立ち上がりが良くなったのです。そして半年が経つ頃には、スカスカだった生え際に新しい毛が生え揃い、地肌の透けもほとんど気にならなくなりました。睡眠時間を確保したことで、肌の調子も良くなり、日中の集中力も劇的に向上しました。かつての私のように、仕事や趣味を優先して睡眠を削っている人は多いかもしれません。しかし、一度失った髪を取り戻すための苦労を考えれば、毎日7時間の睡眠を確保することは、最も安上がりで効果的な投資です。私の経験から言えることは、髪を救いたければ、まず枕を新調して早く寝ることです。体と髪を十分に休ませる時間を作ることこそが、どんな高級な育毛剤よりも確実な効果をもたらしてくれました。